2012年2月13日月曜日

物々交換

学生の頃から、海外旅行が自分の生活で重要なポジションを占めています。僕は、行きと帰りのチケットだけ買って、できるだけその国の人たちと同じ水準で生活しながら、街をフラフラするのが好きです。行く前には、ほとんどその国のことは調べません。行きあたりばったりというのが、一番そこに住む人とのやり取りが発生して面白いです。出発前に情報を入れすぎると、新鮮な感じも薄れてしまいますし…。

当然、仕事を持ってからは1週間程度しか行けないのですが、数年前にアフリカらしいアフリカに行ってみたいと思い立ち、ケニアに行きました。飛行機を乗り継いで、ナイロビの空港に着き、外に出てみると、もうそこにはキリンやシマウマがのそのそと動いていました。ナイロビは治安も悪いらしいので、僕はすぐにサファリツアーを申し込んで、都市を離れました。

サファリというのは、車に乗りながら野生動物を見て回るものです。夜は、ハイエナの遠吠えや、何かの足音に怯えながらテントで寝ます。朝日を見ようと歩いていると、マサイ族がやってきて、「朝は、危ないから早くテントに戻れ!前にイギリス人がゾウにアタックされて死んだんだ」とのこと。さすがにアフリカまで来ると、人間だけでなく野生動物にも襲われる心配があるのかと笑ってしまいました。

マサイ族の若者

サファリの合間、僕もそうなのですが、マサイ族も暇そうにしていたので、彼らと話をしました。その中で、一人のマサイの若者と仲良くなり、話しているうちに、ふと、彼が腰からぶら下げている木の棒のようなものが目につきました。聞いてみると、その棍棒で動物と戦うのだと言います。人間以外はどんな動物でも倒してきて、ライオンでさえこれで殺す、と。棍棒は先端がドライバーのヘッドのような形で、長さは孫の手くらいしかないのです。このリーチで戦うなんて無謀じゃないか?などと考えていると、「お前は、ライオンが怖いか?」とマサイ族。「怖い」と答えると、「オレは怖くない」と胸を張って主張します。けれど、マサイ族が赤い布を身にまとっている理由を聞いてみると、「赤はライオンが怖がるから」とのこと。ライオンのこと、結局怖いんじゃないの?と内心思いつつ、棍棒を手に取って、振ったりしていると、「この棍棒、欲しい?お前の服と交換しないか?」と持ちかけてきました。マサイ族がライオンを倒したという棍棒、悪くないなぁと思い、ユニクロのTシャツと交換しました。今頃、彼はユニクロのTシャツを着て、サバンナを駆け回り、僕は今、日本にて、棍棒で肩を叩いています。

彼は、僕が持っていた『CASIO』の2千円くらいの時計にも興味を持ち、それも交換してくれと言ってきました。ちなみに彼も時計は持っていたのですが、『CASIQ』というもの。時計は旅に必要だからダメだと断っても、本物への憧れからか、なかなかあきらめず「牛1頭と交換でどうだ?」と真顔で言ってきます。ちょっと面白いなとは思ったものの、「さすがにそれはいらない。持って帰れないし」と断ると、「じゃあ、ヤギでどうだ?」と。

外国というよりは異国といった趣のケニア。自分と全く違う文化で育った人と話すと、自分自身が今まで持っていた既成概念や考え方が壊れることがあります。壊れたと同時に、自分の自由度も増すような感じがあって、僕はその瞬間が結構好きです。実はカウンセリングというのは、異文化との交流でもあるので、僕はそこに魅力を感じているのかもしれません。

さすがにマサイ族には簡単に会いに行けませんが、日本にいても自分とは異なる文化を持った人っていっぱいいますよね。僕は、自分と違う職業の人と話すのが好きなのですが、行き詰ったような時にそういう人と話をすると、状況を打破するようなヒントがもらえたりしますよ。
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