2012年3月25日日曜日

伝える技術

前回、自分の思いを言葉にすることをおススメしたので、今回は、じゃあ、どう伝えたらいいのか?について書きたいと思います。
(前回記事:自己主張の意味

僕は外国に行くのが好きで、今まで40カ国に行きました。前にも書きましたが、旅の良さの一つは、その国の人との交流です。ですから、旅行中は日本にいる時よりも能動的にその国の人に話しかけて、やり取りを楽しみます。
(関連記事:物々交換

以前、弟とスーパーにいたら、外国人の女性が『北海道チーズ』と書かれた箱を手に持ちながら近づいてきて、「これは日本のチーズなのか?」というようなことを英語で聞いてきました。弟は、外国に行ったことがありません。ここは兄らしくカッコいい所を見せようと、「そうだよ。日本の物で、北の方の北海道という所で作られたみたいだね」と、得意になって余計なことまで教えてあげました。けれど、その女性は「?」という顔をしていて、僕が「あれ?」と思っていると、弟が横から出てきてペラペラと女性に話しかけ、その女性は納得してどこかに行きました。それから僕の方を向いて、「兄ちゃん、違うよ。『日本のチーズなのか?』って聞いたんじゃなくて、『日本語でチーズって書かれてるか?』って聞いてたんだよ」と解説してくれました。外国に行ったことすらない弟の方が、僕よりも英語を聞き取れていたのです。内心、かなり恥ずかしかったんですが、「あぁ、そうなんや」とだけクールに言っておきました。

何が言いたかったかというと、こんな程度の英語力でも、旅行して出会った人と話したり、やり取りしたりはできるのです。それは、言葉の内容を聞き取っているのではなくて、相手が話している時の雰囲気で何が言いたいかを読みっとって、自分も雰囲気を使って伝えているのだと思います。誰かに自分の思っていることを伝えるとき、どんなことを話すか?はもちろん大事ですけど、どんな雰囲気で話すか?はもっと大事だと思います。

この点を、クリエイターの箭内道彦さんはとても上手に表現しています。
「自分のことを好きだと告白してきた相手が緊張のかけらもなく、ものすごく饒舌だったら、『あれ、ほんとに自分のこと好きなのかなあ』と思いませんか。うつむいて、真っ赤になりながら、声を震わせてぼそぼそ呟くほうが伝わることというのもたくさんある」とのことです。(『サラリーマン合気道』より)

コミュニケーションが上手な人のイメージって、どんなものでしょうか?嫌な相手でも、相槌をうちながらちゃんと意見を聞いて、相手が受け取れるように噛み砕いてから自分の考えを伝える、というようなものが一般的ですかね。確かに、円滑なコミュニケーションをはかるという点では、これがいいと思います。けれど、自分の思いを伝えるという点では、やはり思っていることが雰囲気に滲み出るような伝え方の方がいいのではないでしょうか。何を言っているのか分からないけど、旨そうに料理にがっついてる人と、クールに食べて流暢においしさを語っている人とでは、どっちの方がおいしそうに見えるでしょうか?

今まで自分の思いを溜めこんでいたけれど、少しずつ話せるようになりたい時や、トラブルがあって関係が悪くなっちゃった人と、何とか修復したい時などに「どういう風に話したらいいか分からない」という人がいます。けれど、そういう時は、うまく話さなくてもいいんだと思います。『どういう風に話したらいいか分からない』という気持ちを感じながら話すから、自分の思いの強さや真剣さが相手に伝わることもあります。

ちなみに箭内さんの『サラリーマン合気道』という本は、発想や考え方を自由にしてくれる話がたくさん盛り込まれています。下手なメンタルヘルス関係の本よりもよっぽど分かりやすく、本質をついたものだと思います。僕のカウンセラー仲間に紹介したらやはり好評で、内輪で流行っていました。サラリーマンじゃなくても、関係なく読めますよ。

サラリーマン合気道 (幻冬舎文庫)
箭内 道彦
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